implexe: 2011年12月アーカイブ

横浜に、つい最近、私たちのアトリエで設計させていただいてた2棟の住宅が同時に竣工しました。いずれも北側敷地で、南側に隣家が迫っているため、通常の日当りを期待するのが難しい敷地でした。お施主さんからは、「敷地の条件がかなり難しいのは承知しているけれど、ここに、何とか日当りの良い住宅空間を実演できないでしょうか」とご相談を受けていました。そこで、自然光の経路を立体的に検討し、光を様々な形で取り入れるアイデアを実現させました。敷地の特徴を注意深く調べた上で、ハイサイドライト(高窓)、トップライト(天窓)、光井戸や中庭、スリットや軒下などをバランス良く配置してアレンジし、組み合わせて、様々な方角から自然光を取り入れ、融合させる空間的工夫をしました。
おかげさまで、ほぼ計算通りに、とても明るく開放的な住宅空間ができあがりました。

横浜の三渓園に、織田有楽が創った「春草蘆」(しゅんそうろ)という茶室があります。この茶室はもともと、九窓亭と呼ばれていたことからも分かるように、多彩な窓があちこちに空けられ、えも言われぬ豊かな空間を生み出しています。敷地が横浜市内であったこともあり、設計の課程ではその九窓亭のイメージを参考にしたりしていました。

それに関連して、ここでお伝えしておきたいのは、北向きの窓の有効性について、です。
日本の場合、一搬的に南面採光がもっとも良いとされているので、北向きの窓と言えばあまり効果がないと思われがちです。が、実は北向きの窓は、採光のバランスを考えた場合、もっとも安定した、おだやかな光を取り込むことが出来ます。光には直接光と拡散光があり、北側からの採光はそのほとんどが拡散光や間接光になるので、まぶしすぎず、暗すぎず、ある意味でちょうど良い明るさとなるからです。(ちなみに、日差しが極度に強い亜熱帯の国などでは、北向きの窓の方が逆に喜ばれたりもします)
直接光を取り込まない北向きの窓をいかに計画し、柔らかく内部へと染み込んでいく光の道をいかにデザインするか。これは、建築を設計する上で、とても大事な要素の一つなのです。
今回の設計でも、そのことを頭に入れながら詳細に検討を重ね、思い通りの明るさを実現することができました。

比喩的な意味も含めて、住まうための空間が明るいことは、日々の生活と気持ちを豊かにしていく上で、もっとも大事な要素のひとつなので、いつも、それを考えながら設計を行っています。

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