昨年の東日本大震災以降、耐震補強や地震対策、リフォーム等についてのご相談を、私たちの事務所でもときどき受けることがあります。時節柄、おそらく、地震対策についてまったく関心のない人は、いらしゃらないのではないかと思います。
耐震診断や補強は、ケースバイケースなので、一括りにすることは、はなかなか難しい側面があります。ただし、これまでいくつかの事例に立ち会ってきた経験から言えば、耐震は一面的に考えるのではなく、総合的な見地から判断し、かつリフォームという側面を併せて計画した方が結果的には良いだろうと思います。
総じて言えば、きわめて安全率の高い形で耐震補強のみを厳密にやるのは、相当なコストがかかります。それで耐震補強をあきらめているケースも、きっと多いと思います。そうした場合には、あまり杓子定規に「すべての場所を完全な形で補強する」というのでなく、全体のバランスを考慮しながら、メリハリをつけて補強し、かつリフォームの要素を取り入れて、前向きな形で補強を行うのが、さしあたってのベストだと考えます。
今ちょうど、以前よりご相談に乗っていた、新しい物件の耐震改修計画が進んでいます。これは、築50年ほどの古い木造住宅に関して、耐震補強とリノベーションの両方を行う計画です。床を一部はがして吹き抜けとし、構造補強をしつつ、明るく開放的な空間へと再生させるアイデアを提案しています。
ここでは、構造の専門家の先生とともに、できるだけ施工の手順を合理化し、簡略化させた新しい工法を開発しているところです。先日、大学で構造実験に立ち会い、予想通り十分な強度が得られていることが確認できました。これが、デザインと耐震補強の両方を視野に入れた、ユニークな工法で、実現すれば、いろいろな応用可能性があるだろうと予測しています。
新しい可能性を目指して、是非、リノベーションによる良い空間と、しっかりした耐震補強の両方を実現できるよう、現在進行中です。