住宅の高さと温度差

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これまでアトリエで、3階建ての住宅をいくつか設計してきました。土地の有効利用という観点から、敷地が小さくても3階建てにすれば、十分に豊かな空間を創り出すことは可能です。
ひとつのプロトタイプとしては、「敷地80㎡以下で、3階建てにして1階に駐車場+居室、2階にLDK、3階に寝室その他を計画し、それらを吹き抜け等でつないて光を取り入れる」というパターンがまず考えられます。
ところでそうした計画とは別に、住宅を3階建てで計画すると、実際に建ててみないと分からないような、いろいろと興味深い現象が起こります。
その一つが、温度差です。
3階建てにすると、当然のことながら建物全体の高さがある程度、出てくきます。が、昨今の住宅は、昔のように小屋裏の空間をあまり取らないことも多いので、直射日光に近い3階部分は暖かくなり、隣地に囲まれた1階部分は日陰になって涼しくなります。また、「煙突効果」という空気の自然な流れにより、暖かい空気は上に集まるので、さらにその傾向が強くなります。
その結果として、夏は1階がすずしく、冬は3階が暖かくなる、という現象がとてもはっきりと出てきたりします。

設計のアイデアとしては、逆にこの現象をうまく利用し、できるだけ空調機器に頼らずに、夏冬の温度分布を巧みにアレンジすることが、重要になってくるし、また面白いテーマにもなります。
こうした気候の変化を視野に入れるのは、日本の風土ならではですが、最近はどちらかというと、「冬の寒さは何とかなるけれど、夏の暑さはつらい」とお話されるお施主さんが増えてきました。
温暖化で、都市部全体が暑くなっているからかもしれませんが、「日本の住処は、夏をもって旨とすべし」という古来の考え方は、やはり当たっているといえるのかも知れません。
とは言え、多雪地帯となるとまた話は別なので、やはり建築は奥が深いものです。

(Y.M.)

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このページは、implexeが2010年10月16日 15:54に書いたブログ記事です。

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