implexe: 2010年10月アーカイブ

大学で学生たちと雑談しているおりに、「ケーキで建築を作ってみたら面白いのでは」ということを話していたら、研究室の学生が、ある日、ケーキの建築を作ってきました。それから何人かの学生が、競うようにケーキ建築を作って研究室でお披露を行い、僕も食べさせてもらって、盛り上がりました。
それで「ケーキ」(cake)と「建築」(architecture)を掛け合わせて「ケーキテクチャー」という言葉を作り、いろいろ可能性を考えてみることにしました。

今年の6月に、建築家の伊東豊雄さんに、大学に来ていただいて講演会を開催しました。そのときに終了後の懇親会で、サプライズのプレゼントとして、伊東さんの建築をケーキで作って見ていただきました。研究室の学生たちが作ったものです。伊東さんもとても喜んで下さって、作った学生たちも大喜び。
「食べられる建築」というのは、そこにいる人たちに喜んでもらえるので、良いですね。それで味がよければ、文句なしです。
写真は、伊東さんにケーキテクチャーを見ていただいているときのもの。
テーブルに置かれた3つのケーキのモチーフが、何の建築か、お分かりになるでしょうか。

(Y.M.)

ケーキテクチャー_伊東豊雄講演会.jpg

これまでアトリエで、3階建ての住宅をいくつか設計してきました。土地の有効利用という観点から、敷地が小さくても3階建てにすれば、十分に豊かな空間を創り出すことは可能です。
ひとつのプロトタイプとしては、「敷地80㎡以下で、3階建てにして1階に駐車場+居室、2階にLDK、3階に寝室その他を計画し、それらを吹き抜け等でつないて光を取り入れる」というパターンがまず考えられます。
ところでそうした計画とは別に、住宅を3階建てで計画すると、実際に建ててみないと分からないような、いろいろと興味深い現象が起こります。
その一つが、温度差です。
3階建てにすると、当然のことながら建物全体の高さがある程度、出てくきます。が、昨今の住宅は、昔のように小屋裏の空間をあまり取らないことも多いので、直射日光に近い3階部分は暖かくなり、隣地に囲まれた1階部分は日陰になって涼しくなります。また、「煙突効果」という空気の自然な流れにより、暖かい空気は上に集まるので、さらにその傾向が強くなります。
その結果として、夏は1階がすずしく、冬は3階が暖かくなる、という現象がとてもはっきりと出てきたりします。

設計のアイデアとしては、逆にこの現象をうまく利用し、できるだけ空調機器に頼らずに、夏冬の温度分布を巧みにアレンジすることが、重要になってくるし、また面白いテーマにもなります。
こうした気候の変化を視野に入れるのは、日本の風土ならではですが、最近はどちらかというと、「冬の寒さは何とかなるけれど、夏の暑さはつらい」とお話されるお施主さんが増えてきました。
温暖化で、都市部全体が暑くなっているからかもしれませんが、「日本の住処は、夏をもって旨とすべし」という古来の考え方は、やはり当たっているといえるのかも知れません。
とは言え、多雪地帯となるとまた話は別なので、やはり建築は奥が深いものです。

(Y.M.)
今日は久しぶりの雨です。雨と言えば、まず雨をしのぐ軒下というものを思い浮かべます。
日本は雨が多い国なので、屋根が張り出した軒下の空間は、大事な意味を持ちます。昨今の建築は、法律や敷地の制約などから、なかなか軒を自由に出すのが難しくなっていますが、雨をしのぎ、日差しをコントロールしながら風を取り込む工夫として、軒下や庇は、とても優れた建築の部位です。
職業がら、街を歩いていても気がつくと、建築のいろんな部分に目がいくことがよくあります。そんなときに、特に有名な建築物でなくても、狭い敷地の中で巧みに軒を出している建築に出会ったりすると、「巧いなあ」と感心したりします。
アメリカの建築家であるフランク・ロイド・ライトの建築は、そうした軒を、とてもエレガントにデザインに組み込んでいる住宅が多いので、今もときどき、ライトの建築を参考にすることがあります。
そんなわけで、豊かな軒下のある建築をつくれたら、いいな、といつも思っています。

ところで、先日、僕の務める大学で、建築の学生たちが茶室をつくりました。
僕が指導をしながら、キャンパス内の中庭に、セルフビルドで自分たちで作ったものです。
千利休の「妙喜庵待庵」をモデルにして、茶室空間に関する勉強会を繰り返し、構想段階から一緒に考えて実現させました。
僕が言うのもなんですが、これが、なかなかのできで、学生たちもよくやっていて、感心しました。
茶室には、浮かぶキューブというコンセプトから、<浮立庵>という名前を名付け、茶道部の方々を招いてお茶会も開催しました。
下記が、内観写真です。内部の壁は、様々な素材を使い分けてランダムに仕上げています。掛け軸の書には、「直心是道場」と書かれています。竹に活けられたお花は、秋の季節に合わせ、秋の七草から選んで見立てたものです。
いかがなものでしょうか。

(Y.M.)

浮立庵、内部.jpg


暑かった夏が過ぎて、秋の気配が日ごとに増しつつあるこの10月から、アンプレックスのブログをスタートさせることにしました。
アトリエでの活動を紹介したり、日々の雑感などを、ときどきお伝えしていこうと思います。
お時間のある方は、ときどき、のぞいてみて下されば幸いです。

アンプレックスは、東京・千代田区の外神田という場所にあります。
ここは神田明神のすぐそばで、北に歩けばル・コルビュジエの設計した国立西洋美術館があり、南に足を向ければジョサイア・コンドルのニコライ堂が威風堂々と姿を見せ、東に目をやればアキハバラのにぎわいがすぐそこに広がっているという、かなり面白い場所です。

そんなアンプレックスからの通信を、これから、お送りすることにしたいと思います。

(Y.M.)

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