住宅設計のプロセス

今回は、僕のアトリエで設計した住宅の一つを取り上げ、その設計プロセスの一部を紹介します。

取り上げる住宅は、東京都内に建つ、鉄骨造3階建ての住宅です。設計の考え方を反映し、建主さんと相談して、spin-offと名付けられました。

敷地の現地調査を経て、建主さんと何回も打ち合わせの上、実は最初の建築イメージは、下記のアート作品から始まりました。

一見、建築とは全然関係ないように見えますね。これはブランクーシというアーティストの、「空間の鳥」という有名な彫刻作品。

光と風を、建築にどうやって取り入れるかを繰り返し検討し、このイメージに至りました。それをイメージしつつ、初期の頃に描いた僕のファースト・スケッチが下記です。

ここから、下記のように、具体的に色々な案を検討しました。

すごい数の模型ですが、これら一つ一つを、実際に詳細に検討しています。

もちろん、あらゆる条件を検討しました。使い勝手、建築基準法、光と風の取り入れ方、プライバシーの確保、駐車場の使いやすさ、予算、構造的なバランス、素材、その他諸々です。

それらの検討を経て、最終的に次のような案にたどり着きました。

そしてこれが構造のフレーム模型です。鉄骨の骨組みで組まれています。

これは内部空間の模型。これらを使って、さらに詳細に検討。

そして紙面の都合上、詳細は省き、いきなりですが地鎮祭の様子。女性の神主さん。しっかり儀式を進めてくださいました。

その後、鉄骨が組みあがった状態です。構造を検討し、杭も打っているので、地震対策もバッチリ。下で人が集まっているのは、上棟式の宴会。

これは、建設途中の、建築の学生たちを連れての、現場見学会。床にコンクリートが打たれ、階段が入りました。頑丈な構造体になりました。

そして完成です。ほとんど模型通りに出来上がりました。

中はこんな感じ。1階広間。シースルーの階段で、明るさと広さを工夫。

3階のテラスと、屋上への階段。

2階、3階の居室。3階は良い眺め。

これは水周りです。ガラスドアを使って、開放感を生み出しました。洗面カウンターも、照明を組み込んで、おしゃれにまとめました。

軟弱地盤であることや、隣地がギリギリまで迫っていること等、色々と厳しい制約のある敷地条件の中で、建主さんの要望を最大限に実現するため、様々な工夫を織り込みました。

敷地は20坪そこそこでしたが、ここに駐車場2台分を確保した二世帯住宅とし、吹き抜け・テラス・屋上・その他いろんなことが実現されています。建主さんにも喜んでいただけました。

本当はまだまだ紹介したい写真がいっぱいあるのですが、今回は取りあえずここまでにします。

この住宅の写真は、インスタグラムでも紹介していますので、良かったらそちらもご覧ください。

ではまた!

「美術と建築のあいだ」展

今日は、以前、銀座のギャラリーで開催された、「美術と建築のあいだ」という展覧会について紹介します。

これは、美術家の彦坂尚嘉さんと僕が、<美術家と建築家の二人展>として、協働して作品展示を行った展覧会です。

この展覧会の概要は、lLIXIL出版の10+1WEBにて、「美術と建築のあいだをめぐって」というタイトルで、僕がそのレポートをまとめています。

展覧会場は「ギャラリー手」という画廊で、残念ながら今はもうありませんが、銀座・京橋に位置していました。

銀座にあったギャラリー手

ここでは僕は、当時アトリエで進行中だった住宅のプロジェクトをテーマに、パランプセスト(重ね書き)というコンセプトで展示を行いました。これが会場構成の模型写真です。

30分の1の会場構成模型

この展覧会では、3×33枚=99枚のドローイングを横長に並べ、それがグラデーションで、青から白へと移り変わっていく表現としました。

それに合わせ、33個の住宅模型を展示。ドローイングと模型の縮尺はすべて100分の1に統一し、ドローイングは図面に僕のスケッチを重ね書きする、という手法を取りました。

設営作業に参加した学生たち。みんな、僕のアトリエに来ていた学生です。

完成した展示風景です。

撮影:白濱雅也

展示イメージをチェックする、僕の後ろ姿。ちょっと偉そうですね。

ドローイングの一部。

彦坂さんの美術作品とのコラボレーション。

オープニングパーティには、建築関係、美術関係を始め、多くの方々が来てくださいました。こんな感じです。

この時は、建築評論家や美術評論家にもご参加いただき、今はなき、すぐ近くのINAXギャラリーで関連シンポジウムも開催し、多くの方々に聴講いただきました。

こんな風に、アーティストの方とコラボレーションするのは、僕も大いに刺激を受けて、すごく面白かったです。

ではまた!

浮かぶ茶室と竹ドーム

今回は、浮かぶ茶室と竹ドームを制作した話です。

以前、大学の世田谷キャンパス内に、研究室で浮かぶ茶室を作りました。そこに竹のドームを重ねあわせ、キューブ(立方体)とドーム(球体)を組み合わせた構築物を制作して見ました。

最初にまず、木材で立方体を作り、それを竹のドームで覆います。竹は、世田谷トラストまちづくりという団体から、提供していただきました。

立方体を竹ドームで覆う立方体は一辺が2.4m

次に、竹ドームの中に、複数の立方体を組み入れます。

次に壁を貼ります。

塗装作業。だんだん形が見えてきました。学生たちが、頑張っています。

これが、完成をイメージした模型写真。

竹ドームは途中で少し曲がってしまいましたが、何とか完成。赤いキューブが、茶室部分。

少しだけ浮かんでいます。フローティング・ティールーム。

彫刻家のイサムノグチによる、「レッド・キューブ」という作品を参考にしました。

そこに、白い立方体の展示スペースと待合を組み合わせて、コントラストを作りました。

完成後は、茶道部の人たちを招いて、お茶会もやりました。これが茶室内部。掛け軸も本格的で、なかなか良くできています。内装デザインも、すべて研究室で行いました。

同時に、仮設建築博物館として、研究室で制作した建築模型もい、いろいろ展示。

お茶会の風景です。学外からも、多数の方々が参加。

楽しいプロジェクトでした!

ではまた!

坂倉準三展と、バタフライ屋根

東京の汐留に、パナソニック汐留美術館があり、ここでは優れた建築展が開催されることが多いので、僕もよく訪れています。

以前、ご縁があり、ここで開催された「坂倉準三展」に、南研究室が模型を出展したことがありました。

坂倉準三といえば、世界的な建築家であるル・コルビュジエの弟子として有名です。また、かつての渋谷や新宿の都市開発にも関わり、文字通り東京の骨格作りに大きな影響を与えた建築家でもあります。

その坂倉さんが設計した住宅を調査した上で、藤山邸という、すでに現存していない住宅の模型を研究室で製作し、展示しました。この模型です。

この住宅の特徴は、バタフライ屋根です。文字通り、蝶々が羽を広げたような屋根の形をしていて、外に向かって広がっているので、のびやかで見晴らしの良い軒下空間が生まれています。

全体は、中庭をコの字型に囲んだ構成で、地形をうまく活かした巧みなデザインとなっており、今見ても惹かれる要素が随所に散りばめられています。

階段で少し上がって、高床になっている玄関部分も、なかなか良いですね。

この坂倉さんの住宅に触発されて、以前、僕も横浜・日吉での住宅設計のプロジェクトで、バタフライ屋根の住宅案を何案も考えていたことがありました。その時の計画案の一例が、例えばこれです。

通常、住宅やその規模の建築は、切妻屋根や寄棟と呼ばれる屋根で計画されることが多いです。が、敷地の形状や条件によっては、このバタフライ屋根としたほうが、自然の光を取り入れやすく、外部テラス等のひさしとして、バランスよく合理的に計画できる場合もあります。

屋根のデザインは、建築全体の骨格を形作る基本要素なので、重要ですね。

ではまた!

リスボン建築トリエンナーレ展のこと

以前、私の研究室で、国際建築展に出展・参加したことがありました。今日はその展覧会の活動紹介をしたいと思います。

この展覧会は、ポルトガルで行われた、リスボン建築トリエンナーレという国際展です。私たち南研究室は、この展覧会に、日本チームの代表の一つとして参加しました。この展覧会は、ポルトガルの有名な建築家である、アルヴァロ・シザが設計したポルトガル・パヴィリオンを会場に、様々な国が参加し、大規模に開催されました。

展覧会場となった、アルヴァロ・シザ設計のポルトガル・パヴィリオン

私たちの研究室は、このときは「多数性としての東京」というコンセプトを立て、東京の都市域から、多次元のアーバン・ヴォイドを抽出する、ということを試みました。このことを、以前私は、『現代思想』という雑誌の「現代数学の思考法」という特集にて、「都市の多数性をめぐって」という文章にまとめています。

この展覧会では、南研究室の学生全員がポルトガルに行き、展示作業に参加しました。

展覧会の展示作業。建築家やアーティスト、学生、デザイナー等、日本チームとして様々な人たちが参加。

展覧会のオープニングには、ヨーロッパの各国から集まった人たちで、すごい賑わい。その数、なんと1500人以上!アートに関心を寄せる人たちの層の厚さに、驚かされました。

展覧会オープニング。次々と人が集まり、その盛況ぶりに驚く。

南研は東京の都市リサーチのパネルと、建築的提案の模型等を展示しましたが、多くのヨーロッパの人たちが熱心に観てくれて、手応えを感じました。

南研究室の展示。模型を日本から持っていくのが、一苦労でした。何度も空港で止められ、ヒヤヒヤ。
展覧会場での、南研の学生たちと僕。Tシャツも、展覧会に合わせてでザイン。後列、右から5人目が僕。

展覧会での出展に加え、この時はリスボン工科大学と国際ワークショップも行い、街中の広場でグループワークや発表会を開いて盛り上がりました。

リスボンの街中広場で開催した、リスボン工科大学とのワークショップ。お祭りのようで、楽しかった!

この展覧会は、帰国後、東京・新宿のパークタワーで帰国展も開催し、多くの来ていただきました。

新宿パークタワー、OZONEでの帰国展

というわけで、これ以上になく充実した展覧会でした。このときの南研究室の活動は、『10+1』48号(LIXIL出版)という雑誌にて、16ページに渡って掲載されました。

今はコロナ禍で、なかなかこうした活動ができませんが、また早く、こんな風に楽しく盛り上がれたら、と思っています。

ではまた!

空き家プロジェクト展の会場構成

以前、大規模なアートイベントである「越後妻有アートトリエンナーレ」に、招待作家として出展し、様々なプロジェクトに関わったことがありました。

そこで今回は、その時に開催された展覧会について紹介します。

このトリエンナーレは、新潟県十日町市で、3年ごとに開催されているアートイベント。このときに、地元の空き家を、アートスペースとして再利用するプロジェクトがありました。空き家の現地調査を行った上で、専門家や学生たちで模型を制作し、記録に残しています。僕もその実測調査のため、一時期、ほとんど毎週のように新潟に行っていました。

筑波大学での空き家プロジェクト打ち合わせ。様々な専門家や大学生が集まった

その展覧会を、地元の「農舞台」という建築内で開くということで、会場構成のデザインを、南が依頼されました。

これが、そのときの会場構成模型です。

会場構成の50分の1模型。手前に茶室的な部屋を作っている

この会場構成デザインでは、「自宅の居間にいるように、くつろげるギャラリー」というコンセプトで、靴を脱いで鑑賞するスタイルにしました。また、地元の杉を床フローリングや展示台に使い、現地の空き家から出た建具などを再利用し、パーティションにしました。

地産地消、地元の杉を利用して床や展示台を製作

会場構成の作業には僕も参加し、いろいろな大学や専門学校の学生たちが参加しました。大変な作業でしたが、みんなで盛り上がって、楽しかった!時には小学校に泊まり込んでの作業も出たり。

空き家から出てきた建具や農具を再利用

最終的には、こんな感じになり、イメージ通り、かなり良い雰囲気の展示会場に。

展覧会の風景。杉の木が模型によくなじんでいる

参加した方々や、観に来られた方にも喜んでもらえて、良かった!ちなみにこの時の活動は本として出版されましたが、すでに売り切れて絶版になっています。

ではまた!

家具の設計

大学の研究室では、設計活動の一つとして、家具設計やインテリア・デザインを、継続的に進めています。

今回は、研究室で設計した木製棚を紹介します。

これは南研究室で設計し、設置した木製家具。研究室が、メープル・センチュリー・ホールという校舎にあることにちなんで、「春と秋」をテーマにしました。なのでタイトルは<spring/autumn>。

面扉にはメープル(楓)を使い、カウンター天板にはチェリー(桜)の木を使用。また、カウンター側面には、スプリング・トーンというモザイクタイルを貼り込みました。また、背面には月桃紙という和紙系の壁紙を貼り、そこに紅葉をデフォルメした赤いスチールバーをつけました。

これらに間接照明等を組み込んだら、なかなか良い雰囲気になりました。

家具は普段、頻繁に使うものなので、インテリアを構成する要素として、重要ですね。

この家具のおかげで、研究室の雰囲気が、一気にアットホームになり、学生たちも喜んでいます。ここに倉又史郎さんがデザインした、有名なオバQという照明器具を購入して、オブジェとして置きました。

換気シミュレーション解析Project

2020年4月に、神戸商工会議所の委託を受けて始まった、新型コロナウイルス対策のための建築プロジェクト。国士舘大学南研究室、芝浦工業大学西村研究室、および関係者の皆さんと協働し、室内環境における換気シミュレーション解析およびその改善提案を行っています。

ここでは神戸を中心に様々な室内空間の実地調査を行い、気流の流れを詳細に分析した上で、建築計画の検討を行っています。

タイニーハウスの設計

アトリエと大学研究室の協働により、設計・製作したタイニーハウス(動く小さな家)です。

宿泊施設として使えるよう設計したもので、実際に旭川市にて、ホテルとして利用されました。

また、動く家の実証実験として、大学のキャンパス内に1ヶ月間、展示し、学生たちが泊まり込んで調査研究を行いました。

アトリエ・アンプレックスの関連動画

TVディレクターに制作していただいた、アトリエ・アンプレックスの紹介動画です。

また、南が共同主宰として活動している、神田クリエイターズ・ラボの動画を紹介します。こちらも、ディレクターに製作していただきました。

神田クリエイターズ・ラボは、画家や音楽家、漫画家、デザイナー等、様々なクリエイターが400名あまり集まっているグループです。神田のアトリエにて、いろんなメンバーの作品を展示し、オープンギャラリーイベントを開催しました。